JA 日本 機関投資家のお客様
債券

インフラ・デット:マクロ懸念は根強くも活動は底堅い

2019年10月 - 4 min レポートを読む

第3四半期のインフラ・デット関連のファイナンス活動は、夏場の減速が予想されていたにもかかわらず、全体で見ると底堅い推移となりました。米国やカナダが活況を呈した一方、ブレグジットを巡る懸念が根強い欧州はやや減速しました。

ハイライト

第3四半期のインフラ・デット関連のファイナンス活動は、夏場の減速が予想されていたにもかかわらず、底堅い推移となりました。米国とカナダでは、ファイナンス活動の多くが、ミッドストリームや再生可能エネルギー、従来型の電力関連などエネルギー・インフラ分野で行われました。欧州では、ブレグジットを巡るボラティリティを背景に質の高い公益関連資産が選好されました。オーストラリアでも、コア資産の借り換えや増加傾向にあるグリーンフィールドの官民パートナーシップ(PPP)案件などを中心に活発なファイナンス活動が継続しました。

北米・中南米:エネルギー・インフラが牽引

ミッドストリームーパイプラインおよび液化天然ガス(以下、LNG): 引き続き、シェールガス生産、およびLNGを中心としたエネルギー輸出が米国のインフラ投資の大半を牽引しています。LNGを含む炭化水素を掘削拠点から精製施設や最終市場まで輸送するための巨額の投資が必要とされており、パイプラインやLNG輸送施設が魅力的なファイナンス機会となっています。  

電力: 第3四半期においては、銀行のプロジェクト・ファイナンスの主流である従来型の電力案件が、機関投資家デット市場における取引の大半を占めました。こうした動きを活発化させた要因としては、ガスタービン・コンバインドサイクル発電施設の新規建設が増加したことや、機関投資家が建設リスクを負う姿勢を強めた点などが挙げられます。第3四半期に実施された多くの案件の一部は、変動収入ベースのエネルギー販売によるキャッシュフローに基づく案件でした。機関投資家が固定収入契約ベースのキャッシュフローのみを選好してきた歴史を考えると、その投資姿勢には大きな変化が見られています。

再生可能エネルギー: 契約ベースの再生可能エネルギー(風力および太陽光)プロジェクトが第3四半期の案件フローを牽引しましたが、プロジェクト・ボンドおよび銀行ローンの双方においてプライシング競争が次第に過熱化しました。カリフォルニアでは、電力大手のPG&E社が(まだ承認されてはいないものの)事業再編計画を発表したことから、再生可能エネルギー・プロジェクトに関する規制面のリスクが後退しているものとみられます。既存の電力購入契約が全て執行されると仮定すると、当該計画により、関連するエクスポージャーを巡る銀行や一部機関投資家など貸し手の懸念も軽減される可能性があります。

欧州:質の高いディフェンシブ資産が選好される 

コア資産: 欧州では、ブレグジットを巡る不透明感の持続を受け、ファイナンス活動は減速し、英国におけるグリーンフィールド・プロジェクトへの新規投資も失速しました。一方で、水や下水、配送システムなど公益性およびディフェンシブ性の高いコア資産は引き続きファイナンス機会の源泉となりました。また、鉄道依存度の高い大陸欧州諸国と英国を結ぶ主要な輸送資産である鉄道車両も案件フローをもたらしました。

無線通信: 都市と地方の接続性を欧州の全世帯に提供するという欧州連合の公約に支えられたインターネット&デジタル経済の拡大を背景に、データ・センターやファイバー・ネットワークなどの資産をインフラストラクチャーとして受容する動きが拡がっています。この分野における政府の支援も活発化しています。

その他のテーマ

資産持ち分売却によるファイナンス: 第3四半期においては、バリュー・アッド案件へのファイナンスを望む貸し手が限定的であったことから、質の高いインフラ資産の持ち分売却が当該案件のファイナンスにおける資金源となりました。これらの案件は一般に、ハブ空港や地域公共施設、主要地域パイプラインなど安定的でキャッシュフローを生み出す必要不可欠なインフラ資産で構成されています。

GDP連動資産: 投資適格下位の信用力を有し、GDP成長や貿易量といったマクロ経済要因へのエクスポージャーを有するプロジェクトの人気が低迷したことで、全体的な需要が減少しました。投資家がより有利なプライシングを求める中、少なくとも1件の既存取引が当四半期中に見送られました。 

オーストラリアのコア開発案件: オーストラリアでは、コア・インフラ資産の開発案件が新たに推進されました。ビクトリア州における主要道路プロジェクトやメルボルン空港の借り換え案件の入札申し込みが完了しています。

見通し

案件パイプラインは、9月の増加に続き、11月まで高位を維持するものと予想されます。金利低下と安定的なキャッシュフロー利回りに対する需要は、当該分野におけるファイナンス活動を牽引する可能性が高いとみています。

  • 再生可能エネルギー、電力、ミッドストリーム: 特に太陽光発電を中心とする米国の再生可能エネルギー分野では、プロジェクトおよび太陽光パネルの廉価なコストが継続的な開発を促しており、引き続き投資機会が見込まれます。電力分野では、機関投資家がリファイナンス・リスクを取る姿勢を強めていることから、変動収入ベースのキャッシュフローを有する先進的な案件フローが増加するとみています。ミッドストリーム分野では、複数の流域で投機的な集油施設の建設・ファナンスが進められていることから、固定収入契約ベースのキャッシュフローを生み出す確立されたパイプラインの投資魅力度が極めて高いと考えています。
  • PPPプロジェクト: PPPの主要市場である英国および大陸欧州で政治的な不透明感が強まっていることから、PPPプロジェクトの数は世界的に減少しています。米国では、連邦ベースのPPP法案は1件も成立しておらず、州ごとのプロジェクトが継続しています。例えば、州立大学の多くは、教育の中核的ミッションに使用する一時金を生み出すべく、エネルギー・システムの内製化を進めています。また、裁判所や市民センターなど社会インフラ資産も、群や市町村ごとに都度開発されています。こうしたプロジェクトが、プライシングはタイトながら、ファイナンス機会を提供し続けるものと見込まれます。
  • GDP連動資産: GDP関連資産の借り換え案件が、特に英国および欧州において、第4四半期に投資機会をもたらす可能性があるとみています。しかし、これらの市場で経済的および政治的な不安定性が高まっていることを考えると、資産の質やプライシングの判断には綿密な調査が必要とされるでしょう。英国では、ブレグジット問題が継続する中、公益事業や公営住宅などディフェンシブな資産に対する需要が引き続き高位を維持するものとみられます。
  • M&Aとバリュー・アッド: 特に投資ホライズンの長い戦略的なエクイティ投資家および機関投資家が、安定的でキャッシュフローを生み出すインフラストラクチャーおよびエネルギー資産に対する需要を強めており、案件価格は高止まりを続けています。M&Aの動向を予測することは困難ですが、スポンサーやディベロッパーが利益確定を望み、その他の投資家が資金投下を望む環境においては、支配権を獲得できる案件や、部分持ち分の売却が増加するものと私達は考えています。再生可能エネルギー・プロジェクトのポートフォリオ資産の売却も継続する公算が大きいとみています。安定的なキャッシュフローを追求する非インフラ系のプライベート・エクイティ・ファンドや、米国の再生可能エネルギー市場において効率的なスケール・メリットおよびエクスポージャーの獲得を試みるグローバルの投資家などによって、現在こうした資産に対するディープなバイヤーによる市場形成がなされています。

さらに、長期化する低金利環境において貸し手が利回り追求の動きを継続する中、少数持ち分型の共同組成案件、中南米案件、変動収入ベースのキャッシュフローをもたらす電力案件など、非伝統的なデット機会の提供が増えてくるものとみられます。しかしながら、これらの案件において付随するリスクに見合ったリターンが見込めるか否かを判断するには慎重な分析が不可欠です。

X

当社のウェブサイトBarings.comをご利用いただくことにより、(1)当社がお客様のデバイスに特定のクッキーを配置したり、利用規約およびウェブサイトのプライバシーに関する通知に記載されているその他のオンライン追跡メカニズムを使用することができること、(2) お客様が当該利用規約に了承したことにご同意していただけたものと致します。