パブリック債券

債券投資は小国に勝機あり

2025年10月 – 2 分 レポートを読む

米国の関税政策や米中対立、地政学的リスクなどをめぐる不確実性は企業投資や家計消費を抑制し、需要ショックを誘引するとみられる。不確実性がもたらす安全資産への選好は債券投資の支援材料と言えそうだが、高関税や地政学的リスクがもたらす供給面から来るインフレ圧力には警戒が必要だ。ただし、大国発の不確実性は、国内経済の開放を進めてきた小国により大きな影響を与えそうだ。

各国の失業率についてトランプ米政権発足前の2024年と足元の直近の数値を比較してみよう。先進10ヶ国、地域を大国と小国に分けて、2024年の年間平均失業率と不確実性の増した2025年の直近失業率のそれぞれ平均値を比較をすると、小国の失業率上昇が著しい。大国がもたらす国内経済の負の影響が小国にとってより厳しく、失業率の上昇に現れた格好だ。

大国(4ヶ国)
 

2024年失業率
(年間平均値)

2025年失業率
(直近値)

変化幅
(%ポイント)

10年物国債
利回り変化
(2025年初来)

米国 4.0% 4.3% +0.3% -56bps

ユーロ圏

6.4% 6.3% -0.1% +21bps

日本

2.5% 2.6% +0.1% +53bps

英国

4.3% 4.8% +0.5% -4bps

4ヶ国平均

4.3% 4.5% +0.2% +4bps

 

小国(6ヶ国)
 

2024年失業率
(年間平均値)

2025年失業率
(直近値)

変化幅
(%ポイント)

10年物国債
利回り変化
(2025年初来)

カナダ

6.4% 7.1% +0.7% -13bps

豪州

4.0% 4.5% +0.5% -26bps

スイス

2.4% 3.0% +0.6% -14bps

スウェーデン

8.4% 8.7% +0.3% +16bps

ノルウェー

4.0% 4.9% +0.9% +14bps

ニュージーランド

4.8% 5.2% +0.4% -45bps

6ヶ国平均

5.0% 5.6% +0.6% -11bps


このような国内経済への負の影響を抑えるべく、中央銀行の金融政策も緩和的となりがちだ。ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は10月に0.50%の利下げを実施し、利下げを開始した2024年8月からの累積の利下げ幅は3.00%に達する。これと対照的に、大国である米国の利下げ幅は1.375%、ユーロ圏は2.00%に過ぎない。

中央銀行の緩和姿勢が続くとみれば短期金利への低下圧力が長期金利にも及んでくる。上記の表を比べてみると、大国4ヶ国の2025年初来の10年物国債の平均利回り低下幅が4bps(0.04%)に対して、小国6ヶ国のそれは-11bps(-0.11%)となっている。不確実性への警戒が続く債券市場だが、大国発の不確実性の影響が及ぶ小国に勝機がありそうだ。

(注)当レポートで引用される情報及びデータは2025年10月22日現在のものです。

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Headshot of Manabu Tamaru smiling at the camera.

溜 学(たまる まなぶ)、CFA

先進国ソブリン債券チーム、リード・ポートフォリオ・マネジャー

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