イラン情勢を巡るCIA(金融)とFBI(財政)のスタンス
イラン情勢を背景に原油価格の変動が大きくなり、日本を含む先進国でもインフレの上振れリスクが再浮上しています。景気モメンタムが鈍化しても、エネルギー主導の物価上昇は家計のインフレ期待や企業の価格転嫁を通じて粘着化しやすく、金利・為替・クレジットが同時に不安定化しやすい局面です。短期的にはリスク回避の値動きが先行し得る一方、こうした急変動は中長期的には買い場を生みやすい点も意識しておきたいところです。
中央銀行が今回とりわけ慎重になりやすい背景には、コロナ後からウクライナ危機期の資源高局面で受けた「インフレ対応が後手(ビハインド・ザ・カーブ)」との批判の記憶があります。原油高が再燃しかねない局面で「物価上昇は一時的」と拙速な判断に陥れば、インフレ期待の再上昇や政策運営への信認低下につながりかねません。そのため、中央銀行はインフレ警戒モード(CIA:Central banks in Inflation Alert)を強めることが予想されます。景気への配慮よりもインフレ抑制を優先し、金融緩和を遅らせ、場合によっては保険的な利上げも実施する方向にバイアスがかかりやすいとみています。政策金利の引き下げを期待することだけに依拠した運用は機能しにくい環境になりがちです。
一方、財政政策は、資源価格上昇を起点とする生活費高騰が政権基盤を揺るがすことへの警戒から拡張しやすくなります。家計の痛みを緩和する財政支出は、結果として需要の下支えとインフレ圧力の温存につながり得ます(FBI:Fiscal policy Boosts Inflation)。さらに赤字拡大は国債需給への警戒を強め、タームプレミアム(期間プレミアム)を押し上げる要因になりやすい傾向にあります。短期金利は「CIA」が下がりにくくし、長期金利には「FBI」が上昇圧力を加えやすくする — すなわちイールドカーブがスティープ化しやすい力学が働きやすいと考えます。
当面は「インフレ上振れ」、「財政悪化」、「成長減速」が同居し得るため、「CIA」と「FBI」の影響を受けにくい国への投資を伴った投資設計が有効です。そのうえで、急変動局面を以下のような国の債券へ資金を振り向ける機会に捉えたいと考えています。
原油高に強い国の国債:エネルギー価格の物価への影響が小さく、財政余力があり、国内供給力がある国は相対的に政策運営の自由度が高く、調整局面で投資妙味が見出しやすいと見ています。
物価連動債(TIPS等):名目債のインフレ上振れ時の下方リスクを緩和する物価連動債は一定の魅力があると見られます。
供給制約下でも交易条件が良好さを保ちやすい通貨(例:資源輸出国):地政学的リスクは資源材料の供給制約に繋がりやすく、資源輸入国には不利ですが、資源輸出国には交易条件の改善を通じて通貨の下支え要因になると考えます。
総じて、イラン情勢を起点とする原油高は、CIA(中央銀行)を「信認優先」へ、FBI(財政)を「生活費危機回避」へと駆り立て、インフレと金利の上振れリスクを残しやすい局面です。そのような中、原油耐性・インフレ耐性の高い資産への分散を軸に、調整局面を段階的な買い場として捉える戦略が有効と考えます。
そして最後に一言付け加えるなら、不確実性の高まりは安全資産志向も呼び込みやすく、良質国債はポートフォリオの安定性をもたらすこと — いわば KGB:Keep Government bonds as a Buffer(国債を市場変動のバッファーに活用)も同時に意識したい局面です。
(注)当レポートで引用される情報及びデータは2026年3月24日現在のものです。
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