CLO:選別的な市場環境における投資行動
CLO(ローン担保証券)は、安定した需要と建設的な市場環境を背景に、安定したキャリーと構造的な強靭性を引き続き提供しています。一方で、発行体やセクター間のパフォーマンス格差が拡大する中、より高クオリティのポジショニング及び選別が重要となっています。
マクロ環境が変化を続ける中、投資家は金融政策やインフレ、世界的な成長見通しに対する期待感を調整しつつあります。想定されていた利下げ時期が後ろ倒しとなる中、市場は地政学的緊張や重要なイベントである米国中間選挙などといった背景を抱えつつ、強弱まちまちな経済指標を見極めています。それでも、年初のリインベストメントのフローやクレジット市場全体に対する堅調な需要が投資家センチメントを下支えし、市場の安定維持に寄与してきました。
こうした安定基調はCLO市場にも波及しており、機関投資家は依然として、変動金利クーポン、強固なストラクチャー、そして他の債券セクターに対する上乗せスプレッドという組み合わせに価値を見出しています。しかしながら、市場の状況は二分しています。セクター間の相違や変動するリスクセンチメント、局所的なクレジット・ストレスがパフォーマンスにばらつきをもたらしていることから、分散投資とクオリティ重視のアプローチの重要性が一層高まっています。
ファンダメンタルズ:安定しているものの、一部にセクター固有のリスクが散見される
レバレッジド・ローン市場が相対的に安定していることを背景に、ファンダメンタルズは引き続き下支えされています。同市場では、発行体が満期延長を進め、流動性を確保し、金利負担も概ね良好に管理されています。
しかし、市場環境は一様ではありません。
- セクター固有のストレスは存在します。特に化学セクターでは供給過剰懸念が高まっており、新興技術の競合による脅威にさらされる企業も散見されます。
- CCC格への引下げを含む格下げはやや増加しているものの、この動向はシステミックではなく局所的です。
- 大幅にディスカウントされたローンへのエクスポージャーは拡大しておらず、ストレスは限定的な範囲に収まっています。
一方で、安定化要因も見受けられます。利下げ見通しが後退したことで年後半の金利負担は軽減される可能性があり、借り手のキャッシュフローにおいてサポート要員となる見込みです。個別のクレジット・イベントは引き続き予測されるものの、市場全体ではデフォルトは管理可能な範囲内にとどまる見通しで、ファンダメンタルズは引き続き建設的な状況が続くと見ています。
テクニカル:強固なサポート要因となるものの、二局化が拡大
CLO市場のテクニカル要因は引き続き堅調であり、高水準の新規発行が続くなか、資本構造全体で例年どおり年初のスプレッド縮小が進んだことが下支えとなっています。保険会社や銀行、上場投資信託(ETF)、グローバルの富裕層からの継続的な需要は、金融緩和のスピードや規模が不透明な環境下においても、変動金利の特性を有するCLOトランシェの魅力を引き続き強調しています。
しかし、市場のダイナミクスにはばらつきが確認され始めています。
- リセットおよびリファイナンスの動向がポートフォリオを再形成してきました。マネジャーはこれらの機会を利用して、価格の低い資産や信用面で課題のあるポジションを売却しており、この動向はCCC格やその他低格付けのローンに対する圧力を強め、CLO間のパフォーマンス格差を拡大させています。
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年初のコール活発化により、ストレスのかかった担保資産を自然な需要が限られる市場セグメントへ追加供給することで、この傾向をさらに強めています。これは、現在のタイトなスプレッド環境下で、マネジャーが低格付銘柄の追加に慎重姿勢を崩していないことも反映しています。
- ウェアハウジングのアクティビティは堅調で、米国・欧州の双方で高水準にあります。ただし、スプレッドのタイト化や新規ローン供給の不安定さを踏まえ、マネジャーは組成をより選別的に進めています。M&A を背景とするローン発行は想定を下回っているものの、年後半には活動の増加が見込まれており、CLO 組成の追い風となる可能性があります。
まとめ:同資産クラスには強固なサポート要因が存在するものの、市場環境のばらつきは拡大しており、選別力及びマネージャーの規律が重要となります。
資本構造全体における投資機会
シニアトランシェ
資本構造の最上位に位置するシニアトランシェは、引き続き市場の中で最も魅力的な相対価値を提供しています。AAAトランシェおよびAAトランシェは以下の点から恩恵を受けています。
- 安定した需要
- 魅力的なキャリー
- 強固な構造的保護
また、活発なセカンダリー市場によって強化された流動性プロファイルは、ボラティリティの高い局面においても投資家に柔軟性を提供します。スプレッドは直近のタイトな水準と同程度にあるものの、これらのトランシェはディフェンシブな特性を損なうことなく適度なリプライシングに耐え得る余地があり、より選別的な市場環境においてポートフォリオの中核的な位置づけとなります。
メザニントランシェ
メザニントランシェにおける投資機会はより複雑ですが、追加利回りを追求する投資家には依然として魅力があります。
- 米国のAトランシェおよびBBBトランシェは、ミドルリスクおよび銘柄間のパフォーマンスのばらつきを許容できる投資家にとって、依然として魅力のある上乗せスプレッドを提供しています。
- 欧州のAAおよびAトランシェは相対価値が高く、機関投資家およびウェルス系ファンドの参加拡大に加え、クロスカレンシーの好環境により米国トランシェ対比でのスプレッド優位性が一段と強化されています。
- BBトランシェは特に欧州で魅力的なリターンを提供していますが、固有リスクの上昇や低格付けローンへの圧力増大が進む現在の環境下では、銘柄選択およびマネジャーの投資能力、構造的保護の重要性が高まっています。
エクイティ:長期投資としての位置づけ
CLOエクイティは、ローンスプレッドのタイト化、格下げ圧力の高まり、そして厳しさを増すアービトラージ環境により依然として逆風に直面しています。しかし、複数ファンドを運用するプラットフォーム、特に有利な負債コストを確保できる運用者や、ローンスプレッド拡大局面で資本を投入できる運用者にとっては、依然として魅力的な長期価値を獲得できる余地があります。
イノベーション:CLOの投資機会の拡大
近年、従来型のシンジケート・ローン以外のCLO構造のユニバースが拡大しており、新たな投資機会を生み出しています。
- ミドルマーケット/プライベートクレジットCLOは、かつてはニッチ分野と見なされていたものの、米国・欧州の双方で存在感を高めています。リインベストメントやマルチカレンシー対応のストラクチャーが新たな投資機会を創出しているためです。これらの取引は、従来のCLOフォーマットを維持しつつ、流動性が限られたプライベートクレジットローンへのエクスポージャーを提供し、相対的に高いスプレッドやより強固な構造上のプロテクションを享受できる点が特徴です。
- インフラストラクチャーCLOは新たな分野として台頭しています。データセンターやエネルギー・インフラストラクチャー、交通ネットワークなどの必要不可欠な資産に紐づくシニアローンを裏付けとし、従来のトランシェ構造を通じて質の高い長期キャッシュフローへのアクセスを提供します。
これらのセグメントは、依然として規模は小さいものの急速に成長しており、投資家は自身の選好するリスク・リターン・プロファイルに応じて、長期的な成長ドライバーを備えた高クオリティかつ分散された資産プールへの投資機会にアクセスすることが可能となります。
2026年は「選別力」が問われる
2026年のCLO市場は、タイトなバリュエーションや安定したファンダメンタルズ、進化を続けるテクニカル要因のバランスが取れた状況となっています。スプレッドは直近の最もタイトな水準と同程度にあり、裏付けローンのパフォーマンスのばらつきが拡大する中、投資家は、慎重な銘柄評価やセクター動向の把握、戦略的ポジションの重要性が非常に高まった状況に直面しています。
その一方で、引き続き同資産クラスの耐性を下支えする要因も複数散見されています。
- 年後半の利下げ期待
- レバレッジドローン全体で良好な満期プロファイル
- 保険会社や銀行、ETF、グローバルのウェルスチャネルからの堅調な需要
結論:ボラティリティの上昇やパフォーマンスのばらつきの拡大が予想されるものの、特にシニアトランシェおよび一部のメザニントランシェには依然として魅力的な投資機会が存在しています。選別色の強まる現在の市場環境においては、規律ある銘柄分析と積極的なモニタリングが不可欠となります。分散の拡大を適切に読み解き、精度の高いポートフォリオ構築が可能な投資家や運用者は、今後新たな機会が顕在化する局面において有利なポジションに立つと思われます。
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