投資適格社債:柔軟性が重要

2021年7月 – 3 分 レポートを読む
金利やインフレに対する不確実性が残る中、従来の社債以外の商品を含む投資適格クレジット全体に、投資機会が引き続き見出されています。

第2四半期の投資適格社債市場は、米国国債利回りが安定的に推移したため、回復基調をたどりました。特に、6月に米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の引き締めへの方向転換を示唆したことから、投資家の多くは引き続き金利上昇の可能性を念頭に置いていますが、当四半期の投資適格社債は1.63%と良好なパフォーマンスを示しました1。経済成長およびワクチン接種の普及に対する楽観的な見方が続く中、社債スプレッドは引き続き縮小し、当四半期末には年初から約16bps縮小して80bpsとなりました。
 

図1:投資適格クレジットのスプレッドは引き続き縮小 

出所: Barings、2021年6月末現在
 

クレジット指標の改善

ファンダメンタルの観点から見ると、企業のクレジット指標は引き続き改善傾向を示しています。企業収益が堅調に推移するにつれ負債の増加は減速し、その結果、企業のレバレッジはパンデミック後のピーク時よりも低下しています。企業がバランスシート上の現金をどのように活用しているかを引き続き注視していますが、ほとんどの企業は慎重であり、多くの場合、現金を負債の返済に充当していると思料されます。同様に、配当金や自社株買いも、ほぼEBITDAの成長に合わせて行われています。また、M&Aは確実に増加していますが、特にエネルギー・セクターでは、その多くが負債ではなく株式により調達されており、これは債権保有者にとってプラスに働いています。   

昨年の新規発行額が過去最高となる2兆1,000億米ドルにのぼったことから、今年は通常の水準に戻ると予想されました。しかし、発行額はやや減少したものの過去と比較して非常に高い水準を維持しており、第2四半期末時点で8,350億米ドルに達し、6月まで月次の予想額を上回っています2。発行額が増加したにもかかわらず、大量の供給は根強い需要に支えられ、市場に簡単に吸収されました。この需要の多くは、自国もしくは域内の債券が、低利回りもしくはマイナス利回りの水準にあることから引き続き困難に直面している、特に欧州やアジアの投資家によるものでした。実際、昨年、金利および社債利回りが史上最低水準で推移したため、一部の投資適格社債の機関投資家は、低格付けかつ高利回りのアセットクラスへの配分を検討せざるを得ませんでした。今年初めに金利が上昇したことから、投資家の多くは投資適格資産へ再び資金を配分し直しました。特に、企業年金が株式から長期債への乗り換えを検討していることから、下半期も同様の動きが継続すると予想されます。
 

投資機会の発掘

経済状況の改善は、今後の企業信用力に有益となると見ており、今後数ヶ月間に選別的な機会が見出されると考えます。当社では、ライジングスター、つまりハイイールドから投資適格に格上げされる可能性のある企業に対しても引き続き注視しています。この投資機会の多くは、昨年、パンデミックの影響により投資適格から格下げされた約2,380億米ドル相当のフォーリン・エンジェル銘柄(クラフト・ハインツ、フォード、オクシデンタル・ペトロリアムなど)から生じると見ています。これらの企業には、投資適格への格上げまでに数年を要するものもありますが、ハイイールドに比べて有利な資本コストや資本市場へのアクセスなどの点から、投資適格への格上げに対するインセンティブは確実に存在します。短期的には、格上げ候補として特にエネルギー関連企業が注目されており、今年に入って格上げされた企業も存在します。また、ハイイールドには、フォーリン・エンジェルではないものの、クレジット指標が改善していることからライジングスターとなり得る企業が数多く存在します。Netflixや食肉加工会社のJBSもその一例です。

今後の金利上昇の可能性や現在のスプレッド水準を考慮すると、より短期の戦略や従来の社債および国債以外の商品は検討に値します。現在、魅力的な価値を見出している分野には、証券化商品、特に投資適格ローン担保証券(CLO)や資産担保証券(ABS)市場の一部があります。例えば、ABSは分散効果が高く、魅力的なリスク調整後リターンが期待できます。また、CLOは、変動金利のクーポンを提供するため、金利リスクの低減につながります。さらに、エマージング社債は、先進国社債に比べてデュレーションが短いという特性を有し、新興国特有のリスクにより拡大したスプレッドで取引されることが多いことから、選別された投資機会が見出されています。

今後数ヶ月間の見通しとして、インフレや金利だけでなく、新型コロナウイルスやその変異株が経済成長を脅かす可能性に対する懸念が残ります。このような環境下では、投資適格分野を幅広くカバーするマルチクレジット戦略が特に有効であると考えています。マルチクレジット戦略はベンチマークにとらわれない傾向があるため、ポートフォリオ・マネジャーは、資産クラス、セクターおよび地域を問わず、最も魅力的な相対価値の機会を追求する柔軟性を有し、その結果、長期的により魅力的なリスク調整後リターンをもたらす可能性のある銘柄への多様なアプローチが可能になります。
 

1. 出所: Bloomberg Barclays、2021年6月末現在 
2. 出所: Bloomberg Barclays、2021年6月末現在 

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