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ハイイールド:道半ば?

2020年10月 - 4 min レポートを読む

2020年第1四半期は新型コロナウイルス(以下、同ウイルス)による衝撃、第2四半期は景気刺激策が市場のテーマとなりましたが、私たちは未だ同ウイルスを克服することができず、景気回復への道筋も依然として不透明です。斯かる状況はハイイールド市場にとって何を意味するのでしょうか。

Jon Bon Joviの有名な歌詞を引用すれば、「私たちはまだ道半ば」といったところでしょうか。

一方、ボラティリティが断続的に上昇する不安定な環境下にあっても、ハイイールド市場は第2四半期から第3四半期終盤にかけて、価格上昇を伴いながら大方回復しました。企業の資金調達は順調に推移し、第3四半期の発行額は第2四半期と同様前期比から増加し、特に米国ハイイールド債市場においては過去最高に迫る1,250億米ドルを記録しました1。発行市場においてはリファイナンス案件がその大宗を占めるものの、M&Aパイプラインは増加の兆しを見せ、企業は再び長期的な視野に回帰しつつあることを窺わせます。従って、デフォルト予想は、同ウイルスのピーク時から大幅に低下した適度な水準に留まっています。 

第3四半期末にはボラティリティが再び上昇したものの、米国ハイイールド債およびバンクローンの同期間のリターンはそれぞれ4.68%、4.13%と良好に推移しました。同様に、欧州市場における同期間のリターンも、バンクローンが2.69%、ハイイールド債はそれを若干下回る2.49%となりました2。スプレッドも回復基調にありますが、同ウイルス前に比して引き続き高い水準にあります (図1)。 

図1: 米国および欧州におけるスプレッド(ハイイールド債 vs バンクローン)


出所: BAML、Credit Suisse 2020年9月末現在


他方で、資産価格の回復はまだ全方位的なリスクテイクを伴うものはなく、同ウイルス前の水準を完全に取り戻すには未だ余地が残されています。旅行およびレジャーならびに娯楽および航空産業等、ソーシャル・ディスタンスのトレンドから特に大きな打撃を受けたセクターにある企業は、同ウイルス前には安定したビジネス基盤を築いていたにも関わらず、依然として冴えない価格で推移しています。同様に、より高格付けのBB格社債は、下落分の全てでないにしてもその大半を取り戻すまでに回復していますが、より低格付けであるB格およびCCC格社債は依然として完全な価格回復には至っていません。 

それでは、今後市場は何処へ向かっていくのでしょうか?概してハイイールド市場は引き続き魅力的であり、今後も投資機会を齎し続けるものと考えます。注目すべきことに、金融危機以降、クレジット・クオリティは著しく上昇し、2007年においては市場の38%を占めていたBB格社債は、現在では58%にまで上昇しており、他方、CCC格は12%未満にまで低下しています3。また、流動性の観点からは、危機の間、市場がよく持ち堪えたことも特筆に値すべきです。 

しかし、今後の道筋は未だに不透明であり、これまでに同様、慎重かつ選別的なアプローチが不可欠であるものと思料されます。企業の多額に及ぶ資金調達は、パンデミック初期の打撃を乗り越える上で極めて重要であり、短期的には非常にポジティブではあるものの、長期的には不確実性が高まります。無論、パンデミック収束後には力強い回復を遂げる可能性を秘めた、高い負債水準を十分に管理しうる企業がある一方で、特にパンデミック後に経済が弱体化した場合においては、この危機において積み上げられた負債によってより大きな困難に直面する企業もあるものと思われます。

さらに回復への道のりを困難にしているのは、今後想定される尽きることのないリスク要因です。同ウイルス第2波の可能性、米大統領選挙をめぐる不確実性、ブレグジットおよび経済成長等を材料に、ボラティリティは断続的に上昇する可能性があります。
 

回復に備える

斯かる状況にあっては、資本構造においてより上位にある担保付資産、とりわけ優先担保付社債を検討することが肝要であると考えます。利回りおよびスプレッドはハイイールド社債と同等水準であるにも関わらず、優先担保付社債はこれまで無担保社債に比してより高い回収率を提供してきました。一般的に、優先担保付社債は、担保となる事業価値により二重に保護されているため、優先担保付社債の投資家は無担保社債の投資家と比較して債務再編時により有利な立場にあることを意味し、場合によっては企業の所有権を獲得することを通じて、最終的には回収率を最大化することが可能となります。驚くべきことではないかもしれませんが、優先担保付社債は、3月の市場急落以降の発行市場において最初にプライシングされたハイイールド取引であり、投資家が不確実な市場環境下において最上位のプロテクションを要求するのは当然のことであり、以降、優先担保付社債の供給は健全な状態を維持しています。

また、投資適格からハイイールドに格下げされたフォーリン・エンジェルと呼ばれる社債は、今後数ヶ月において投資機会をもたらす可能性があります。ハイイールド市場に格下げされたフォーリン・エンジェルの多くは、流動性維持および負債返済を行うに十分な借り入れ余力を有する多角的かつ大規模な企業が発行する社債にもかかわらず、BB格と比較してより高いスプレッドで取引される傾向があります。今年は、2,000億米ドルにも及ぶ投資適格社債がハイイールド社債に格下げされたにもかかわらず、その影響は限定的でした。現在、格付機関により「見通しネガティブ」または「ネガティブ・ウォッチ」とされたBBB格社債が相当数存在し、今後12~18ヶ月間において約1,500億米ドル規模の投資適格社債がハイイールドに格下げされることが予想されています4。年初にはハイイールド市場の需給悪化懸念要素であったフォーリン・エンジェルは、これまでのところ市場において十分に消化されており、ハイイールド市場全体のクレジット・クオリティの改善にも寄与してきました。

現在の長期にわたる低金利およびボラティリティの高い環境下にあっては、ローン担保証券(CLO)のように市場流動性がより低い資産クラスについても優位性を齎す可能性があります。CLOへの投資により、投資家は伝統的債券およびバンクローン対比で魅力的な上乗せ金利ならびに分散および強固な構造的信用補完による恩恵を享受できる可能性があります。また、一部の発行体がパンデミックにより債務水準の上昇を管理することが困難となる場合においては、ディストレスト債も今後投資機会を提供するものと思われます。
 

今後数ヶ月

米大統領選挙の結果を予測することは究極的には不可能であり、次の景気刺激策が実施されるタイミングや、ワクチンが開発される時期も定かではありません。解っていることは、今後更にボラティリティが上昇する局面が起こりうるということのみです。斯かる市場要因が存在する中において投資タイミングを測るのではなく、経済および市場が回復に向う過程において、短期的な変動に耐え魅力的なアップサイドを提供する可能性のある発行体を発掘し、サイクルを通じて投資を行う戦略こそが有効であると考えます。

1. 出所: S&P LCD 2020年9月末現在
2. 出所: BAML、Credit Suisse 2020年9月末現在
3.  ベアリングスのマーケットに対する見解に基づく 2020年9月末現在
4. 出所: BAML 2020年9月末現在

当資料は、ベアリングスLLCが作成した資料をベアリングス・ジャパン株式会社(金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第396号、一般社団法人日本投資顧問業協会会員、一般社団法人投資信託協会会員)が翻訳したもので、金融商品取引法に基づく開示書類あるいは勧誘または販売を目的としたものではありません。翻訳には正確性を期していますが、必ずしもその完全性を担保するものではなく、 原文と翻訳の間に齟齬がある場合には原文が優先されます。当資料は、信頼できる情報源から得た情報等に基づき作成されていますが、内容の正確性あるいは完全性を保証するものではありません。また、当資料には、現在の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれることがありますが、事前の通知なくこれらが変更されたり修正されたりすることがあります。
Complied (東京):2020年10月27日 M20204Q11

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