パブリック債券

市場は繰り返す?

2021年7月 – 3 分 レポートを読む
四半期毎の利払い日近辺におけるリファイナンスおよびリセット案件の増加により、ローン担保証券(CLO)市場においては、ある程度予測可能なスプレッドの拡大期が到来し、全トランシェに亘り魅力的な相対価値を有する投資機会を提供すると予想されます。

堅調な経済成長およびファンダメンタルズの改善により、第2四半期におけるCLO市場は全体に亘り好調に推移しました。AAA格、AA格およびA格のパフォーマンスは、各0.31%、0.41%および0.66%となりました。BBB格、BB格およびB格もまた、各1.44%、4.44%および6.20%とプラスのパフォーマンスとなりました1
 

四半期後半における発行の急増

第2四半期における市場動向は、多くの点において第1四半期と共通していました。実際、第2四半期初の発行ペースは3月の急増を経て減速したことからスプレッドは大幅に縮小し、年初の水準にまで接近する局面も散見されました。しかしながら、第2四半期の利払い日が近づく中、6月にはエクイティ投資家が、スプレッドの縮小および負債調達コストの低下を活用したことから、リファイナンスおよびリセット案件が相次ぎ発生しました。その結果、同四半期における米国および欧州のCLO発行額は各1,102億米ドルおよび262億ユーロに達し、その大部分をリファイナンスおよびリセット案件が占めました2

大量の案件が市場に供給されたことから、低格付けの BB格トランシェを中心として、全トランシェに亘りスプレッドが拡大しました。スプレッドが拡大したにもかかわらず、CLOの裏付資産におけるリスク特性は引き続き改善傾向にあり、同資産クラスのファンダメンタルズは引き続き堅調であると見ています。実際、裏付資産の格下げは、危機の最中において一部の市場関係者が予想していた規模よりもはるかに制御された水準であり、現在では殆ど見ることがありません。今後予想されるデフォルト率および他の指標も引き続き改善傾向にあり、弊社の見解においては、足元におけるスプレッドの拡大は、ファンダメンタルズの大幅な悪化というよりも、市場のテクニカル要因、つまり発行ペースの加速による供給の増加に因るものであると考えます。
 

図1:発行量の増加に伴うスプレッドの拡大

出所: J.P. Morgan 2021年6月末現在


見落とされがちな投資機会および相対価値

このような環境の中、特にリセット案件は魅力的な投資機会であると考えます。リセット案件は、通常、新型コロナウイルスの影響を受けたセクターへのエクスポージャーが大きいものの、多くの場合、裏付資産の質が高く、裏付資産において損失がほとんど、または全く発生していません。しかしながら、新規案件、リファイナンスおよびリセットの大量発生により、投資家、アレンジャーおよび格付機関への負担が増加し、いくつかの魅力的なリセット案件は市場から見落とされる場合があります。さらに、近年、市場におけるCLOの契約書はますます複雑化し、案件を適切に審査するためには、十分な専門的な人材が必要となります。これらの要素を加味し、一部の投資家は、各案件を調査するための余分な時間およびリソースを費やすことなく、既知および信頼に足るマネジャーの新規案件を選好する傾向にあります。 

豊富な人材と老練なチームを抱えるアクティブ・マネジャーにとって、こうしたCLO関係者が直面する課題は魅力的な相対価値を有する投資機会の発掘につながる可能性があります。例えば、メザニン・トランシェの場合、BB格のリセット案件は、足元新規案件対比35~75bps拡大した水準で取引され、このような取引水準の大幅な格差は、裏付資産に関するクレジットの質の違いによって説明可能なものではないと考えます。資本構造上部においても同様であり、BBB格のリセット案件は新規案件よりも約15~35bps拡大した水準で取引されています3。また、CLOのスプレッドは、同程度の格付を有する投資適格社債およびハイイールド社債と比較してかなりの上乗せが期待され、広範なマルチストラテジー戦略の一部として同資産クラスを組み入れることによる利点を示しています。

今後の見通し

多くの投資家にとって、金利およびインフレへの対応は最重要課題となっていますが、ハイイールド社債または投資適格社債などの固定金利商品と比較した場合、CLOの価格が金利上昇局面においてこれまで安定的に推移してきたことは注目に値します。その一因として、CLO が変動金利であることから、期間を通じてデュレーションまたは金利リスクを抑制可能であったと考えられます。

年後半において、好調な経済成長に牽引され、CLOに対する需要は引き続き堅調であると思料されます。また、2020年に新規発行された案件が引き続きノンコール期間の満了を迎えることから、リファイナンスおよびリセット案件を含むCLOの発行は引き続き活況を呈すると予想しています。予期せぬショックが発生しない限り、四半期毎の利払い日にかけてリファイナンスおよびリセット案件の発行が増加することにより、ある程度予測可能なスプレッドの拡大期が到来する可能性があると見ています。一方、豊富な人材を活用したアクティブ・マネジメントは、相対価値を生み出す投資機会を見極めるために不可欠であり、マネジャーのパフォーマンスにおける重要な差別化要素であると思われます。  
 

1. 出所: J.P. Morgan CLOIE Index、2021年6月末現在
2. 出所: J.P. Morgan CLOIE Index、2021年6月末現在
3. 出所: J.P. Morgan CLOIE Index、2021年6月末現在

当資料は、ベアリングスLLCが作成した資料をベアリングス・ジャパン株式会社(金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第396号、一般社団法人日本投資顧問業協会会員、一般社団法人投資信託協会会員)が翻訳したもので、金融商品取引法に基づく開示書類あるいは勧誘または販売を目的としたものではありません。翻訳には正確性を期していますが、必ずしもその完全性を担保するものではなく、 原文と翻訳の間に齟齬がある場合には原文が優先されます。当資料は、信頼できる情報源から得た情報等に基づき作成されていますが、内容の正確性あるいは完全性を保証するものではありません。また、当資料には、現在の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれることがありますが、事前の通知なくこれらが変更されたり修正されたりすることがあります。
1741048

Taryn Leonard(タリン・レオナール)

マネジング・ディレクター

Melissa Ricco (メリッサ・リッコ)

マネジング・ディレクター

当資料は、ベアリングス・グループが作成した資料をベアリングス・ジャパン株式会社(金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第396号、一般社団法人日本投資顧問業協会会員、一般社団法人投資信託協会会員)が翻訳したもの、または、ベアリングス・ジャパン株式会社が作成した資料で、金融商品取引法に基づく開示書類あるいは勧誘または販売を目的としたものではありません。翻訳、または、資料作成には正確性を期していますが、必ずしもその完全性を担保するものではありません。また、翻訳については原文と翻訳の間に齟齬が生じる場合がありますが、その場合には原文が優先されます。当資料は、信頼できる情報源から得た情報等に基づき作成されていますが、内容の正確性あるいは完全性を保証するものではありません。当資料には、現在の見解および予想に基づく将来の見通しが含まれることがありますが、事前通知なくこれらが変更、または、修正される場合があります。

関連コンテンツ