市場構造及び景気サイクルから見る、米国不動産デット市場の今
ハイライト:
- 米国の商業用不動産及びマルチファミリー住宅におけるデット市場は非常に大きな市場規模を有し、年間数千億米ドル相当の不動産ローンが組成されています。
- 不動産デットへの投資は、安定的なインカム収入を歴史的に生み出してきました。同ローンは実物担保資産による潜在的なダウンサイド・プロテクション効果を有し、魅力的なリスク調整後リターンを齎します。
- 過去10年における銀行のリスク許容度の低下、及び資本規制の影響が、ノンバンク・レンダーの一層の市場参加機会を生み出しました。
- コロナ禍による短期的な逆風にも関わらず、2021年後半における力強い景気回復期待から、物件の需要並びにインカム水準の回復に先立って、リスクリターン観点上、不動産デット投資家にとって魅力的な投資機会の出現が期待されます。
過去数十年に渡って商業用不動産及びマルチファミリー住宅のデットへの投資は、米国の投資ユニバース及び機関投資家のポートフォリオの一部を占めてきました。しかし、過去2回の市場サイクルを経て、ほぼ全ての債券セクターにおける利回り低下傾向の中、不動産デット市場の発展及び成熟化と相まって、不動産デ ット資産はより一層の投資意欲を惹き付けています。当レポートでは、米国商業用不動産デット市場、及び不動産デットを含めたアセットアロケーションに関する伝統的な議論に関する概要をご提供できればと考えております。また、足許の市場環境がなぜ不動産デットへの投資を検討する投資家にとって、魅力的な投資タイミングになるのかという点に関しても議論していきます。
米国不動産デット市場の足許の構造
商業用不動産プライベートデットは、伝統的に以下3つの要素に基づき、ポートフォリオ・アロケーションにおいて検討されます。(1)十分なサイズ及び分散が期待できる投資機会、(2)安定した魅力的な絶対リターン及びリスク調整後リターン期待、(3)十分に分散の効いたポートフォリオによる恩恵