不動産

欧州不動産:住宅セクターにおける投資機会

2022年3月 – 7 分 レポートを読む

投資機会の規模や長期に亘る優れたリスク調整後リターンの可能性、魅力的な分散効果、インフレ対策などを考慮すると、欧州の住宅セクターには魅力的な投資機会が存在します。

大規模かつ分散された投資機会

住宅用不動産市場は、不動産投資家とマルチアセット投資家の両者にとって、投資対象を拡大できる可能性を有しています。グローバル住宅用不動産の市場規模は258.5兆米ドルと推計され、68兆米ドルの市場規模を有する商業用不動産市場を大幅に上回り、市場規模105.8兆米ドルを有するグローバル株式市場や123.5兆米ドルの市場規模を有するグローバル債券市場の投資キャパシティと比しても、2倍超の規模となっています¹。世界的な貯蓄超過や機関投資家にとっての魅力的な投資案件の供給が不足する中、住宅用不動産は機関投資家が見過ごすことのできない大きな投資機会となっています。

図1: 住宅用不動産市場はグローバル株式・債券市場を凌駕している

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出所: SIFMA 2021年7月現在。 Savills 2021年12月現在

特に欧州住宅用不動産に対する投資意欲は直近10年で急増し、取引額は3倍に増加しており、ディールフロー全体の約30%を占めるまでになりました²。この背景には、eコマース主導の小売りセクターにおける不動産の低下によって生じたギャップを埋める目的だけでなく、説得力のある投資観点があります。米国では、2021年において住宅セクターが取引の40%以上を占めたことから、欧州では今後5年以内、もしくはそれより早期に住宅セクターが不動産投資の主流となると思料されます。

図2: 小売りセクターの投資ギャップを埋める既存のニーズ

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出所: RCA 2022年2月現在

また、以下のような住宅用不動産における投資機会のバリエーションも豊富に存在します。

  • 既存の民間賃貸セクター(PRS)における案件の保有
  • マルチファミリー用集合住宅や単一世帯用住宅におけるBTR(Build To Rent、賃貸住宅)およびBTS(Build To Sell、分譲住宅)による新規案件の創出
  • ランド・バンキング(空き家や空き地などを取得し、周辺の土地を含めた地域を一体的に活用・再生する手法)
  • ニッチ分野へのアクセス(例:コリビング(co-living、コワーキングスペースを備えたシェアハウス)、ワンルーム・マンション)
  • 高齢者向け住宅や学生専用レジデンス(PBSA)などの特定層のターゲット化

また、インパクト投資の台頭やESGへの注目度の高まりにより「社会的」要因が重視されるようになり、社会的賃貸住宅やアフォーダブル住宅市場を対象とする投資活動が増加しています。実際、同セクターの多様性により、投資家は住宅資産のみで構成される高度に分散された投資ポートフォリオを構築できる可能性を有しています。

1.出所: Savills、SIFMA 株式および債券データは2021年7月現在、不動産データは2021年12月現在
2.出所: RCA 2022年2月現在

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Paul Stewart(ポール・スチュワート)

欧州・アジアパシフィック不動産リサーチ&戦略責任者

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