欧州不動産デット:足元の投資妙味
数十年ぶりの高いインフレおよび金利上昇を背景に、不動産デットは、魅力的なリターンやデュレーション・リスクの軽減、分散といった側面から、投資を検討するに値する資産クラスです。
ハイライト
- 不動産デットは、不動産エクイティ投資の代替ではないものの、高い補完性を有している
- 魅力的なリターン獲得の可能性など、不動産デットに対するアロケーションを積み増す理由が多数存在する
- 不動産ローンは変動金利であるため、債券投資家にとって長年の課題であるデュレーション・リスクを軽減する
- 不動産デットおよびエクイティは、主要な上場資産クラスをリスク調整後ベースで歴史的にアウトパフォームしてきている
- 特に欧州不動産デットは、投資家に強力な分散効果をもたらす
- 規制の強化やパンデミックが誘発した借り換えニーズの高まりが、ノンバンクの貸し手にとって大きな投資機会を生み出している
不動産デットとエクイティ:相補的な関係
長期的にリスク調整後リターンの最大化を追求する戦略的な不動産投資家は、不動産サイクルを通じて不動産デットおよびエクイティ双方にアロケーションすることにより恩恵を受けることが可能です。特に、不動産サイクルの局面に応じて、投資家の選好に合わせて不動産デットとエクイティのアロケーションを微調整することは検討に値します。例えば、不動産デットのエクスポージャ ーは、不動産サイクルの山の局面に積み上げることで、ピーク時のエクイティ・リターンは諦めることになる一方、今後避けられない将来のダウンサイドを抑制することが可能となります。一方、リターンに対する期待が高まっている不動産サイクルの谷からの回復期には、不動産エクイティのエクスポ ージャーを積み増すことが可能となります。
不動産デットに対する最適なアロケーションは、目標リターンやリスク許容度など、個々の投資家の投資目標によって異なります。分散投資の基本原則によれば、「平均的」な投資家にとって、不動産デットに対するアロケーションは最低でも15~20%程度であることが示唆されます。最もリスク許容度の高い長期的な投資家にとっては50%を超える可能性もあります。不動産デットは、不動産エクイティ投資の代替ではなく、むしろ高い補完性を有しています。
インフレ環境
高いインフレ率は今後数ヶ月継続すると思われます。このような環境下、世界の資本市場において金利環境を先導してきた米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済成長への影響にほとんど配慮することなく、インフレをコントロール可能な状態に戻すために、現在積極的な引き締め局面にあると見ています。したがって、世界的な景気後退リスクは高まっており、ロシアへのエネルギー依存度が高い欧州は特にリスクが大きいと見ています。欧州中央銀行(ECB)による金融引き締めは、FRBに遅れを取る形で、2022年7月の理事会で8年間続いたマイナス金利に終止符を打ち、10年以上ぶりに政策金利を50bps引き上げて0%としました。