TIGERで読み解く2022年

2021年12月 – 2 分 レポートを読む
2021年12月時点の債券市場の動向および見通しについて、先進国ソブリン債券チームの溜 学(たまる まなぶ)が解説します。

2022年は寅年。寅の勇猛さにあやかり、TIGERをキーワードに来年を大胆に展望してみたい。
 

  • T: Tightening(=引き締め)が本格化するが2022年だ。財政、金融両面での引き締めは実体経済のみならず市場の価格形成にも影響を及ぼす。コロナ禍を債務の拡大で乗り切った世界経済にとって財政、金融の引き締めの影響は大きく、既に市場は長期金利の低位安定という格好で反応している。2022年も長期金利の上がりづらい展開は続くものと予想される。
  • I: Inverted Yield(=逆イールド)が定着しそうだ。米国では中間選挙を控え、世論の動向を左右するのはインフレの動向だ。政府の意図を汲む中央銀行は短期金利を引き上げ、インフレ対応の姿勢を見せる。一方、性急な利上げが及ぼす経済停滞リスクを反映した長期金利の低下によって、短期金利と長期金利の逆転現象である逆イールドが生じてくる。経験則的に逆イールドは景気後退の前兆とされ、注意が必要だ。
  • G: Geopolitics(=地政学)の見地では2022年は波乱材料に事欠かない。中国の冬季オリンピックへの米国同盟国側の外交ボイコットと中国側の報復措置は、サプライチェーンの修復に挑む世界経済の大きな懸念材料になる。欧州のエネルギー供給の生命線を握るロシアが、ウクライナ侵攻への野心をむき出しにしていることも不気味だ。これらは全て米国の中間選挙の争点になり、バイデン政権のインフラ投資の実効性に影響を及ぼす。
  • E: Energy(=エネルギー)価格の上下動は国の対外収支に大きな影響を与える。金融の引き締めは間接的にはエネルギー価格の低下要因となろう。一方で、地政学リスクの高まりは価格高騰の要因となる。特に、日本のようなエネルギー源を輸入に頼る国にとって、価格上昇は通貨安に結び付きやすい。
  • R: Reopening (=経済再開)に伴う消費需要の復活に期待がかかるものの、消費の持続性に楽観は禁物だ。デルタ、オミクロンといったギリシャ文字が紙面を飾るウィズコロナの常態化は消費の抑制要因となろう。一方、コロナ禍で定着した非接触、非移動、非密集の生活様式の新常態は旧来の需要を創造的に破壊し、新たな需要を生み出す原動力となることも期待される。


以上、2022年をTIGERで占ってみた。地政学的リスク、エネルギー価格の動向に注意を要し、世界景気に楽観は禁物のようだ。債券市場では、短期金利は上昇しそうだが、逆イールドに向けて長期や超長期の金利のフラット化が進行しそうだ。コロナのピンチをチャンスと捉える新業態、新サービスに期待しよう。どうぞ良いお年を。

K20214Q03

溜 学(たまる まなぶ)、CFA

先進国ソブリン債券チーム、リード・ポートフォリオ・マネジャー

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